FXの「レバレッジ」と「ロスカット」の仕組みを理解することは、安全で効果的なFX取引のために非常に重要です。
適切なレバレッジでロスカット回避を意識した取引をすると、リスクを管理しながら安定した利益を目指せます。
この記事では、
- ロスカットが発動するタイミング
- レバレッジとロスカットの関係性
- ロスカットを避けるための具体的な方法
を、詳しく解説します。
本記事を読むと自分に合ったレバレッジ設定やロスカット回避の方法がわかり、FX取引におけるリスク管理能力が向上するでしょう。
FXのロスカットとは?
FXのロスカットとは、損失の拡大を防ぐ仕組みで、すべてのFX会社に備えられています。
ロスカットの仕組み
FXのロスカットとは、取引における損失を一定の範囲内に抑えるために、FX会社が自動的にポジションを決済する仕組みです。
ロスカットが発動する流れは以下のとおりです。
- 取引に必要な証拠金を預ける
- ポジションの保有により評価損が発生
- 評価損により証拠金維持率が一定の水準を下回る
- ロスカットが発動し、強制的にポジションが決済される
ロスカットはトレーダーが大きな損失を被ることを防ぎ、資金を保護することを目的としています。
相場が急激に変動した場合でも、損失がそれ以上拡大しないようにする重要な仕組みです。
ただし、ロスカットが発動するとポジションがすべて決済されるため、その時点の損失が確定してしまうことも理解しておきましょう。
ロスカットと「証拠金維持率」
FXにおけるロスカットは、「証拠金維持率」が所定の水準まで低下した場合に発動します。
証拠金維持率は、以下の計算式で求められます。
証拠金維持率=有効証拠金÷必要証拠金×100
たとえば、有効証拠金が50万円、必要証拠金が100万円の場合、証拠金維持率は50%となります。
ロスカットが発動される証拠金維持率は、FX会社によって異なります。
証拠金維持率が100%から50%を下回った時点で、ロスカットされるFX会社が一般的です。
有効証拠金:預け入れた証拠金に評価損益を加えたもの
必要証拠金:ポジションを維持するために必要な証拠金のこと。レバレッジ25倍の場合、現在レート×取引数量÷25
ロスカットが発生する証拠金維持率の例
ロスカットが発生する証拠金維持率が、100%の場合の例を見てみましょう。
【新規エントリー時】
新規エントリーで、以下のような取引をしたとします。
- 証拠金10万円を入金
- 1米ドル=100円で1万米ドルの買いでエントリー
- 最大レバレッジは25倍
このケースの必要証拠金は4万円(100円×1万通貨÷25)です。
新規エントリー時の証拠金維持率は250%(10万円÷4万円×100)となります。
【ロスカット時】
その後、米ドルが下落し、1米ドル=93.75円まで下がったとします。
この場合の有効証拠金は3.75万円(10万円-6.25万円)となり、必要証拠金は3.75万円(93.75円×1万通貨÷25)、証拠金維持率は100%(3.75万円÷3.75万円×100)です。
ロスカットが発動する水準に達したため、ロスカットされます。
ロスカットと「損切り」の違い
ロスカットと「損切り」は、どちらもFX取引における損失を制限するための手段です。
しかし、その性質には大きな違いがあります。
ロスカットは証拠金維持率が一定の水準を下回った時点で、FX会社がシステム上で強制決済を執行します。
トレーダーの裁量が入らず、自動的に実行されるため、予期せぬタイミングで発動するおそれがあります。
一方、損切りはトレーダー自身が事前に設定した損失限度額に達した時点で、自らの判断でポジションを決済する行為です。
損切りは、トレーダーが自分のリスク許容度に基づいて決済のタイミングを決められます。
もし、ロスカットされる前に決済したい、という場合、トレーダーは適切なタイミングで損切りをする必要があります。
ロスカットはトレーダーの損失の拡大を防ぐ、FXになくてはならない防御機能です。
ただし、トレーダーはロスカットされないよう、自主的にリスク管理をする必要があります。
FXのレバレッジとは?
「レバレッジ」とは、手持ち資金より大きな金額の取引を可能にするFXの仕組みです。
FXのレバレッジの仕組み
FXのレバレッジとは、証拠金を担保として、実際に預けた資金以上の金額で取引ができる仕組みです。
レバレッジを利用することで、少ない資金で大きな取引が可能になります。
たとえば、10万円の証拠金を入金すると、レバレッジによって以下の金額の取引ができます。
- レバレッジ3倍:10万円×3倍=30万円
- レバレッジ5倍:10万円×5倍=50万円
- レバレッジ10倍:10万円×10倍=100万円
- レバレッジ25倍:10万円×25倍=250万円
日本のFX会社が提供できる最大レバレッジは、金融庁の規制により25倍に制限されています。
投資家保護の観点から、過度なリスクを抑制するためです。
レバレッジを高く設定すると、少ない資金で大きな利益を得られる可能性がある一方で、損失のリスクも同様に大きくなります。
トレーダーはこのようなレバレッジの特徴を理解し、適切に管理しなければなりません。
レバレッジの倍率の計算方法
FXのレバレッジ倍率は、以下の計算式で求められます。
レバレッジ倍率 =(現在の為替レート × 取引数量)÷ 証拠金
為替レートは常に変動するため、トレーダーが直接操作できません。
そのため、レバレッジ倍率を調整するには、取引数量と証拠金の2つの要素を変更する必要があります。
レバレッジ倍率を低くしたい場合は、以下の方法で調整できます。
- 取引数量を減らす
- 証拠金を増やす
自分のリスク許容度や資金管理方法に合わせて適切な取引数量と証拠金を設定し、レバレッジ倍率を調整していきましょう。
初心者にとって適切なレバレッジは何倍?
FX初心者が適切なレバレッジを選ぶ際は、リスク管理と資金管理を優先しましょう。
経験の浅い初心者は、3倍から5倍程度の低めのレバレッジで取引を始めるのが無難です。
低めのレバレッジは相場の変動による影響を抑えられるため、大きな損失を避けられます。取引に慣れてきたら、徐々にレバレッジを上げていくとよいでしょう。
一部のFX会社では最大レバレッジを変更できる
楽天FXなど一部のFX会社では、最大レバレッジを1倍、5倍、10倍などに変更できる機能を提供しています。
最大レバレッジを変更すると、それ以上の倍率では取引できません。そのため、自動的に低レバレッジで取引でき、高レバレッジ取引のリスクを軽減できます。
最大レバレッジを変更できるFX会社を選ぶことで、自分のペースで無理なくトレードを始められます。
また、最大レバレッジは後から変更できるため、徐々にレバレッジを上げていくことも可能です。
初心者はあまり高いレバレッジの取引はおすすめできません。資金が少ない人は1,000通貨以下で始められるFX会社で取引するとよいでしょう。
ロスカットとレバレッジの関係性
レバレッジはFXの資金効率を上げる仕組みですが、高くしすぎるとロスカットのリスクも高まります。
倍率を上げれば上げるほど、ロスカットとレバレッジの関係性は密になると言って良いでしょう。
レバレッジごとのロスカットのレートをシミュレーション
レバレッジごとのロスカットが発動されるレートを、米ドル/円を例に見ていきましょう。
前提条件は以下のとおりです。
- 1米ドル=100円で1万米ドルを買う
- ロスカットが発動される証拠金維持率は100%
レバレッジ25倍で取引する場合、預け入れる証拠金は4万円です。
ロスカットのレートをX円とし、以下のように計算します。
4万円+(X円-100円)×1万通貨 ≦ X円×1万通貨÷25×100%
X≦100
レバレッジ25倍では1米ドル=100円を切るとロスカットが実行されます。
同様に計算すると、レバレッジごとのロスカットが発動するレートは以下のとおりです。
レバレッジ | 預入証拠金 | ロスカットのレート |
---|---|---|
25倍 | 4万円 | 100円 |
10倍 | 10万円 | 93.75円 |
5倍 | 20万円 | 83.33円 |
1倍 | 100万円 | 0円 |
レバレッジを高く設定するとロスカットされやすくなる
上記の例からも、レバレッジを高くするほどロスカットまでの値幅が狭くなり、ロスカットされやすくなるとわかります。
レバレッジが高いとわずかな市場の動きで大きな含み損が生じ、短時間でロスカットにつながりかねません。
一方、レバレッジ1倍では、理論上はロスカットが発動されません。ただし、その分多くの証拠金が必要になります。
FXにおいてレバレッジは有効活用すべきですが、自分の許容できる範囲を慎重に考えましょう。
- 含み損:保有しているポジションが未決済の状態で発生している
- 損失含み益:保有しているポジションが未決済の状態で発生している利益
ロスカットを避けるには?
ロスカットは自分の意図に反して損失が確定してしまうため、できれば執行されないようにするのが望ましいといえます。
そこで、ここではロスカットを避ける方法を解説します。
証拠金を追加する
証拠金の追加は、FXのロスカットを避ける方法の1つです。
証拠金維持率が低下してロスカットのリスクが高まっている場合、追加の証拠金を入金すると証拠金維持率を引き上げられます。
そのため、相場が反転するまで持ちこたえられる可能性が高くなります。
証拠金を追加するか、追加するとしたら金額はいくらかを判断する要素は、以下のとおりです。
- 現在の証拠金維持率
- 目標とする証拠金維持率
- 保有ポジションの評価損益
- 今後の相場見通し
証拠金を追加すると、一時的にはロスカットを回避できます。
しかし、その後も同じ方向へ相場が動くと、損失が拡大してしまいます。
よって、状況によっては証拠金を追加せずに、損切りをしたほうがよいケースもあるでしょう。
証拠金の追加は相場が反転する見込みがある場合には有効ですが、慎重に考える必要があります。
保有ポジションの一部を決済する
FXのロスカットを避ける方法として、保有ポジションの一部の決済も挙げられます。
一部のポジションを決済すると証拠金維持率を一時的に高められ、ロスカットを回避できる可能性があります。
ただし、証拠金の追加と同様に保有ポジションの一部決済は、あくまでも一時的な対処法です。
ポジション決済後も相場の流れが変わらなければ、証拠金維持率は下がっていきます。
そのため、相場が反転する期待が持てない状況では一部決済でなく、見込みのないポジション全部を損切りしたほうがよいでしょう。
損切りルールを守る
FXトレードでロスカットを避け、資金を守るためには自分自身で決めた損切りルールを守ることが重要です。
損失を限定することでリスクを管理し、証拠金維持率の低下を防ぐためです。
具体的にはトレードを始める前に、自分なりの損切りルールを決めておきます。
たとえば、「損失が証拠金の2%に達したら必ず決済する」といった明確なルールを設定し、厳守しましょう。
また、損切りを確実に実行するには、ストップロス注文の活用をおすすめします。
ストップロス注文とは、逆指値注文のようにあらかじめ設定した価格に達した時点で自動的に決済される注文方法です。
ストップロス注文のメリットは以下のとおりです。
- 相場に張り付いていなくても、自動的に損切りが実行される
- 感情に流されずに、冷静に損切りができる
- 損失を限定することで、証拠金維持率の急激な低下を防げる
損切りルールを守ることは、FXトレードでロスカットを避けるために不可欠です。
自分なりのルールを決めて厳守し、リスクを適切にコントロールしましょう。
レバレッジを高くしすぎない
先述のとおり、FXのロスカットを避けるためには、レバレッジを高くしすぎないようにしましょう。
レバレッジが高いほど少ない証拠金で大きな取引ができますが、同時にリスクも高くなります。
レバレッジが高いとロスカットまでの値幅が狭くなり、少しの相場変動でロスカットになるおそれがあります。また、損失額も大きくなってしまうのです。
FXでロスカットを避けるためには、自分に合ったレバレッジで取引しましょう。エントリー前にはロスカットラインの確認も必要です。
まとめ
FXのロスカットとは、損失を一定の範囲内に抑えるためにFX会社が自動的にポジションを決済する仕組みです。
また、レバレッジを高くするほどロスカットのリスクは高まります。
ロスカットを避けるにはリスク管理のために損切りを徹底し、自分に合ったレバレッジで取引する必要があります。初心者は低めのレバレッジで取引をスタートさせましょう。