iDeCoは私的年金制度のひとつで、税制メリットを享受しながら老後の資金作りを行えます。
掛金が全額所得控除の対象となり、所得税や住民税が軽減される一方、所得控除を受けるためには年末調整や確定申告が必要です。
原則として、給与所得者(公務員・サラリーマン)は確定申告が必要ありませんが、一定のケースに該当する場合、個人事業主と同じように自分で確定申告を行わなければなりません。
今回の記事ではiDeCoの確定申告が必要となるケースをはじめ、具体的な確定申告手順について解説します。
iDeCoは確定申告が必要?
iDeCoを利用しているからといって、全員が確定申告をしなければならないわけではありません。
ここでは、iDeCoで確定申告が不要なケースと必要なケースについて、それぞれ解説します。
確定申告が不要なケース
iDeCoへの掛金は所得控除の対象となります。
会社員や公務員の方は、年末調整で控除を受けられるため、通常は確定申告を行う必要がありません。
また、iDeCoでは運用による利益は非課税となるため、一般的な金融商品と異なり、運用益に対する20.315%の申告納税は不要です。
つまり、iDeCoでは掛金と運用益の両面で税制上の優遇措置があり、確定申告の手間が省けるといったメリットがあります。
確定申告が必要なケース
会社員や公務員の方は、原則としてiDeCoの掛金については年末調整で控除を受けられるため、確定申告は不要です。
しかし、次のようなケースでは確定申告が必要となるので注意しましょう。
【確定申告が必要なケース】
・医療費控除を受ける場合
・ふるさと納税で6カ所以上の自治体に寄附した場合
・初年度の住宅ローン控除を受ける場合
その他、年収が2,000万円を超える見込みの場合や、退職により年末調整が行われない場合も、会社員や公務員は個人で確定申告を行う必要があります。
一方、個人事業主や給与所得のない方は、年末調整そのものができないため、iDeCoの掛金について所得控除を受けるには必ず確定申告をしなければなりません。
→なんとなく上の内容がすっきりしないため、下記内容はいかがでしょうか。
【確定申告が必要なケース】
・個人事業主の場合
・給与以外の収入が年間20万円以上ある場合
・医療費控除を受ける場合
・住宅ローン控除を受ける初年度の場合
・ふるさと納税で6か所以上の自治体に寄付している場合
・2か所以上から給与をもらっている場合
・年の途中で退職して再就職していない場合
・年収2,000万円を超える場合
・年末調整をし忘れた場合
自分が年末調整に加え確定申告も対象となるのか、注意して確認しましょう。
iDeCoの確定申告に必要な書類とは
つづいて、iDeCoの確定申告で必要となる書類についてそれぞれ見ていきましょう。
給与所得がある人(会社員など)
会社員で年末調整ができなかった人が、確定申告を行う際の必要書類は、以下の通りです。
書類名 | 概要 |
---|---|
給与所得の源泉徴収票 | 2ヵ所以上から給与をもらっている場合、全ての給与所得にかかる源泉徴収票が必要 |
小規模企業共済等掛金払込証明書 | 国民年金基金連合会から毎年10月下旬頃に送付される |
その他の控除の証明書類(※) | 医療費控除や住宅ローン控除(初年度のみ)などの控除を受けたい場合に提出 |
※該当者のみ
なお、「小規模企業共済等掛金払込証明書」についてはe-Taxによる確定申告の場合、添付が省略できます。
給与所得がない人(自営業など)
給与所得がない人(自営業やフリーランスなど)の場合には、以下の書類が必要となります。
書類名 | 概要 |
---|---|
収支内訳書または青色申告決算書 | 白色申告の場合は「収支内訳書」、青色申告の場合は「青色申告決算書」を作成 |
小規模企業共済等掛金払込証明書 | 国民年金基金連合会から毎年10月下旬頃に送付される |
その他の控除の証明書類(※) | 社会保険料控除や医療費控除、住宅ローン控除(初年度のみ)などの控除を受けたい場合に提出 |
会社員など給与所得がある人との違いとして、源泉徴収票ではなく「収支内訳書または青色申告決算書」が必要な点が挙げられます。
iDeCoの確定申告手順と記載方法について
iDeCoで所得控除を受けるために必要な、確定申告書の作成手順は以下の通りです。
1.iDeCoの掛金払込証明書の取得→小規模企業共済等掛金払込証明書を用意する
2.確定申告書第二表に必要事項を記入
3.確定申告書第一表に転記
4.iDeCoの証明書を添付して税務署に提出
それぞれについて、解説します。
1.iDeCoの掛金払込証明書の取得
iDeCoの実施主体である国民年金基金連合会から届いた「小規模企業共済等掛金払込証明書」を手元に用意します。
なお、発送時期の目安は当年中9月までに掛金の払い込みをした人には10月下旬頃となります。
当年に加入し、掛金の払い込みが10月〜12月の間に開始した人は翌年2月頃までに送付される予定です。
2.確定申告書第二表に必要事項を記入
確定申告第二表の社会保険料控除の次に、小規模企業共済等掛金控除の払込額を記入しましょう。
なお、年末調整をしているか否かで次のように記載方法が異なります。
年末調整をしていない場合 | 「支払保険料等の計」「うち年末調整等以外」の両方に払込金額を記載 |
---|---|
年末調整をしている場合 | 「年末調整」をしている場合は源泉徴収票の「社会保険料等の金額」上段の内書きを「支払保険料等の計」に記載 |
3.確定申告書第一表に転記
第二表に記載した金額の合計額を確定申告書第一表に転記します。
ここで、他の所得控除と合算した金額を算出し、各種所得控除金額から控除する流れになります。
4.iDeCoの証明書を添付して税務署に提出
確定申告書に「小規模企業共済等掛金払込証明書」と「源泉徴収票(会社員および公務員の場合)」を添付し、税務署に提出しましょう。
申告方法は主に以下の3つです。
・確定申告場にいって、作成し提出する
・自分のPCやスマホで申告書を出力し郵送、または税務署に持参する
・e-Taxを利用してPCやスマホで送信する
このうち、e-Taxによる確定申告の場合は「小規模企業共済等掛金払込証明書」の添付を省略可能です。
インターネットで完結するため、上記3つの中ではもっとも便利な方法といえます。
書類を提出してからおよそ1ヶ月から1ヶ月半を目安に、指定した銀行口座へお金が入金されるほか、翌年の住民税が確定した際には所得税控除分の軽減を受けられます。
なお、入金の時期については税務署から通知はがきが送付されるため、きちんと確認しておきましょう。
e-Taxで申告を行った場合は、e-Taxの個人ページから還付金の処理状況が確認可能です。
iDeCoの確定申告を忘れてしまったら
掛金の申告を忘れてしまっても、ペナルティが課されることはありません。
とはいえ、iDeCoは所得控除の対象となるため、申告を忘れてしまうことは必要以上に所得税を納めていることになってしまいます。
たとえば、年収600万円の会社員が毎月22,000円の掛金を支払っていた場合、年間で支払った26.4万円が全額所得控除の対象となり、所得税と住民税をあわせて52,800円の節税となります。
所得が増えれば増えるほど、掛金額が多ければ多いほど節税効果は高まるため、iDeCoを利用しているのであれば所得控除をしっかりと受けるようにしましょう。
なお、掛金の申告を忘れた場合には「還付申告」を行うことで払いすぎた税金を還付してもらえます。
還付申告はiDeCoの掛金を支払った翌年の1月1日から5年間の間にわたって、提出できるため、気づいた時点で速やかに申請手続きを進めることが大切です。
オンラインで還付申告を行う場合、国税庁のウェブサイトの「確定申告書等作成コーナー」から新規に作成します。
画面に表示されている「作成開始」を押下し、提出方法を選んだ上で書類の作成を進めましょう。
期限内に確定申告を終わらせよう
今回の記事ではiDeCoの確定申告が必要となるケースのほか、具体的な確定申告手順について解説しました。
iDeCoを利用しているからといって、必ずしも確定申告が必要となるわけではありません。
そのため、まずは自分がその対象かどうか確認することが大切です。
もし確定申告が必要となる場合には、申告期限に間に合うように早め早めに準備を進めるようにしましょう。
なお、申告手続きで不明なことがある場合には確定申告場に行って作成し、提出するのがおすすめです。
不明点をその場で聞くことができるため、あとからやり直す手間が省けますよ。