会社員のペーパーカンパニーはリスク大!その仕組みとやるべき節税方法(節税ポイントのみ拾って15468とまとめる)

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「会社員がペーパーカンパニーで節税できる」と聞くと、気になるのが「本当に効果があるのか?」「違法ではないのか?」といった点はないでしょうか。

結論をいうと、ペーパーカンパニーを使った節税対策は違法とみなされるリスクが高いです。

会社員の方におすすめできる手法ではありませんが、そのカラクリを理解しておくと安全でより効果的な節税方法が見えてきます。

本記事では、ペーパーカンパニーとはなにか、節税できる仕組みや違法になる理由を解説します。そのうえで、会社員がやるべきペーパーカンパニー以外の節税方法をまとめました。

手取り収入をアップさせたい会社員の方や効果的な節税方法を知りたい方は、ぜひ最後までチェックしてください。

目次

会社員がペーパーカンパニーを作るのはハイリスク

結論からいうと、節税のためだけに会社員がペーパーカンパニーを作るのは違法とみなされるリスクが高いです。

ペーパーカンパニーを作って、本来納める必要がある税金から逃れようとする行為は「節税」ではなく「脱税」行為となります。脱税とみなされると、本来の課税額に対して最大で40%もの重加算税が適用されます。経済的にも社会的にも大きなダメージを被るでしょう。そもそも、副業で事業を行っていない会社員であれば、ペーパーカンパニーを設立したとしても節税にはつながりません。法人の設立費や維持費が発生するため、むしろマイナスが大きくなります。

会社員がペーパーカンパニーを作ることがおすすめできない理由をまとめると、以下の2点になります。

・節税目的だけでペーパーカンパニーを利用すると脱税になる恐れがある
・事業を行っていない会社員がペーパーカンパニーを作っても節税にはならない

ペーパーカンパニーの設立自体は違法ではありません。しかし、節税「のみ」に利用するのはリスクが高く、会社員の方にとってはほとんどの場合で期待しているようなメリットは得られない手法といえるでしょう。

ペーパーカンパニーとは

まずは、ペーパーカンパニーとはどのようなものを指すのかを理解しておきましょう。ペーパーカンパニーと聞くと、なんとなく「怪しい」「うさんくさい」といった悪いイメージを抱く方もいるかもしれません。

事実、違法行為を働くためのツールとして使われることも多いものです。

ここからは、ペーパーカンパニーの定義や、目的によって分類したペーパーカンパニー4種類を解説します。

ペーパーカンパニーは活動実態のない会社

ペーパーカンパニーとは、法人登記されているにもかかわらず、事業や営業の実態がない会社を指します。ペーパーカンパニーという用語は、法律的に定義づけられているものではなく、世間一般で広く使われている通称です。事業を行わずに法人名だけ存在している会社が、広い意味でのペーパーカンパニーに当てはまります。

事業を一時的に休止しているだけのペーパーカンパニーもあるため、ペーパーカンパニーそのものが違法なわけではありません。しかし、ペーパーカンパニーが脱税や詐欺などの犯罪行為に利用されることが多いため、世間的には悪いニュアンスを含んでいる言葉として浸透しています。

ペーパーカンパニーの種類

ペーパーカンパニーに該当する会社を、設立の目的によって分類すると以下のようになります。

休眠会社●登記上では法人として存在しているが、長期間事業活動していない会社(ゴースト会社と呼ばれることも)
●事業活動がない場合、税務署に休眠の届け出を行い、正しく税務申告と納税をしていれば問題ない
ダミー会社●詐欺や悪徳商法など犯罪行為を行う集団が、表向きの顔として設立するペーパーカンパニーのこと
●事実上の経営者が表に出ないようにする目的がある
特別目的会社●特定の取引や資産保有など、特別な目的のためだけに設立した会社
●日本よりも法人税が低い地域(タックスヘイブン)を利用するためのペーパーカンパニーがこれにあたる
虚偽の情報を記載した会社●例えば、特定商取引法によって氏名や住所、電話番号を明示しなければならないネットショップで収益を得たい場合⇒悪質な業者であれば、ペーパーカンパニーを設立して虚偽の会社情報を掲示している

以上の4種類のなかでも違法性が低いのは、休眠会社のみです。ペーパーカンパニーはさまざまな犯罪行為に活用しやすいツールといえるでしょう。

ペーパーカンパニーが節税につながる仕組み

ペーパーカンパニーはグレーな存在ではありますが、「ペーパーカンパニーで節税できる」という情報が流れているのはなぜなのでしょうか?節税のためだけにペーパーカンパニーを作るのは、脱税行為とみなされる危険性があります。一方で、実際に事業活動を行う法人が、ペーパーカンパニーを作ることで得られる節税効果は以下のようなものが考えられます。

・複数の会社に所得を分配できる
・接待交際費をより多く計上できる
・タックスヘイブンを利用して租税回避する

法人に課される税金の仕組みを理解するためにも、ペーパーカンパニーが節税につながる理由を把握しておきましょう。

複数の会社に所得を分配できる

「ペーパーカンパニーで節税できる」といわれるもっとも大きな理由は、ペーパーカンパニーによって利益を分散できる点にあります。事業で得た収益を複数の会社に分散すると、法人税の節税につながるケースがあるからです。

法人税は、法人が事業で得た所得に対して課税される税金です。個人の所得に課税される所得税が、所得が増えるにつれて税率が段階的に上がる累進課税であるのに対して、法人税は所得の額にかかわらず一律の税率が設定されています。

区分所得法人税率
普通法人資本金1億円以下の中小法人年間所得800万円以下の部分15%
年間所得800万円超の部分23.2%
中小法人以外の法人所得にかかわらず23.2%

(参照:No.5759 法人税の税率|国税庁

資本金1億円以下の中小法人の場合、年間所得800万円以下の部分に軽減措置が講じられます。そのため、もともと事業を行う法人がペーパーカンパニーを設立して、年間所得を800万円以下に抑えられるように利益を分散させると、節税につながるのです。

接待交際費をより多く経費計上できる

ペーパーカンパニーを作ると、その分経費計上できる接待交際費の上限額が増えることによって節税効果が得られます。取引先との「お付き合い」のなかで発生した支出を適切に経費として計上することで、法人税の課税対象となる所得を減らせます。つまり、接待交際費として計上できる金額の上限が高いほど、節税できるチャンスが多いといえるのです。

基本的に、接待交際費は法人が計上できる経費として認められていません。しかし、資本金1億円以下の中小法人であれば、以下のいずれかの範囲内であれば接待交際費の計上が可能です。

・年間800万円まで
・接待飲食費の50%まで

例えば、中小法人として事業を行う会社がペーパーカンパニーを設立すると、2社で計上できる接待交際費は「800万円×2社=1,600万円」となります。計上可能な上限額が2倍になるため、先ほどの「複数の会社に所得を分配できる」メリットと合わせて、法人税の節税に効果を発揮するでしょう。

タックスヘイブンを利用して租税回避する

ペーパーカンパニーはタックスヘイブンを活用した租税回避にも用いられます。日本よりも税負担が少ないタックスヘイブンに、ペーパーカンパニーを作って利益を分配させると、日本で利益の全額を税申告するよりも税金を安く抑えられます。タックスヘイブンとは、事業で得た収益にかかる税金の税率が非常に低い国・地域のことです。

例えば、アジアでタックスヘイブンとして知られているのは以下のような地域があります。

・香港
・シンガポール
・マカオ

タックスヘイブンでの会社設立は違法ではなく、以前は税金対策として利用していた企業も実際に多くありました。しかし、国内だけでなく世界的にも規制が進んでいるため、税金を安くするためだけにタックスヘイブンを活用するのは難しくなっています。

ペーパーカンパニーを通じて、多くのケースで違法とみなされる理由

ペーパーカンパニーの設立によって節税できる仕組みがある一方で、これらの仕組みを活用しようとすると実際のところは「違法」とみなされることが多いです。

前述したペーパーカンパニーによる節税の仕組みが違法になる理由は、以下の3点です。

・節税目的のペーパーカンパニーは「脱税」とみなされるから
・タックスヘイブン対策税制によって「規制」されるから
・実態のない個人事業主での節税も「脱税」とみなされるから

順に詳しく説明します。

節税目的のペーパーカンパニーは脱税とみなされるから

節税対策を目的としてペーパーカンパニーを設立して、所得を分配したり経費を計上したりする行為は「脱税行為」とみなされます。税務調査が入り「意図的に納税額を少なくした悪質な脱税」と判断されると、ペナルティとして重加算税が追徴課税されます。経済的な負担が増すのはもちろん、「今後も注視すべき法人」としてマークされてしまう点も大きな痛手です。

例えば、本業と同じ事業内容で別会社を設立すると、税金を安くするためだけに作った実態のないペーパーカンパニーとみなされやすいため注意が必要です。ペーパーカンパニーは税務調査の対象になる可能性があるため、節税対策としては安易に使うべき方法ではないといえるでしょう。

タックスヘイブン対策税制によって規制されるから

ペーパーカンパニーによるタックスヘイブンを利用した租税回避は、現在では「タックスヘイブン対策税制」により厳しく規制されています。タックスヘイブン対策税制は、税率の低いタックスヘイブンで申告する収益が、現地での事業活動で得られたものでなければ、日本の税制に沿った税金が課税される制度です。

タックスヘイブンで会社を作ること自体は禁止されていません。しかし、日本で得た所得を実際の事業活動がないペーパーカンパニーに分配して、タックスヘイブンで得た所得として税申告するのは違反行為となります。

タックスヘイブンで申告される所得は、現地での営業活動や経済的取引など「実態がある事業で得た所得かどうか」が厳しくチェックされます。そのため、タックスヘイブンにペーパーカンパニーを設置しても節税はできません。

実態のない個人事業主での節税も脱税とみなされるから

ここまで事業実態のない「法人」を設立するペーパーカンパニーのリスクを説明してきましたが、事業実態のない「個人事業主」で節税を狙う方法もハイリスクです。個人事業主に対する課税の仕組みを活用すると、会社員に課される税金を減らすことが可能です。しかし法人と同様に、会社員が節税するためだけに「実態のないペーパー個人事業」を開業して税申告するのは、脱税行為とみなされます。

会社員が個人事業主として開業して節税できる仕組み
個人事業主が事業で得た「事業所得」は、会社員が会社から得る「給与所得」と損益通算できます。個人事業主として得た事業所得が赤字であれば、赤字分を給与所得から相殺できるため、その結果給与所得にかかる所得税が安くなります。また、事業所得は経費計上が可能です。自宅で事業にかかわる作業をするのであれば、家賃や光熱費、通信費などを適切な割合分だけ経費に計上できます。これらの仕組みを使うと、個人事業主として経費計上して赤字申告することで、個人が支払う所得税を減らすことが可能です。

個人事業主の開業は、法人を設立するよりもコストや労力がかかりません。そのうえ、給与所得との損益通算によって税負担を減らす効果も高いです。しかし、会社員が個人事業主として開業したとしても、事業の規模や継続性から「事業所得」ではなく、損益通算ができない「雑所得」と認定されることが多いです。事業の実態がないにもかかわらず「事業所得」として赤字計上を行うと、税金を不当に減らす行為とみなされペナルティが課されるリスクがあります。

会社員ができるペーパーカンパニー以外の節税方法

大きな事業をもたない会社員の方は、違法とみなされるリスクが高いペーパーカンパニーよりも、安全で効果的な節税方法を取り入れましょう。手取り収入を上げたい会社員がやるべき節税方法は、以下の3つです。

・控除や減税措置を漏れなく使う
・副業で給与所得を圧縮する
・プライベートカンパニーを設立する

まずは、申請するだけで利用できる控除や減税措置を余すところなく活用することが大切です。さらに、ペーパーカンパニーではなく副業で実際に事業を行って、個人事業主や法人の節税メリットを享受していきましょう。

順に詳しく解説していきます。

控除や減税措置を漏れなく使う

最初にやるべきことは、会社員ができる控除や減税措置を見落としていないかの確認です。税金が安くなる控除の適用を受けるのは、ペーパーカンパニーでの節税を考えるよりも、手間もリスクもかからずに確実に節税できます。

会社員の節税につながる控除や減税措置には以下のようなものがあります。

医療費に対する控除医療費控除1年間にかかった医療費が10万円以上のときに所得控除が受けられる。
メディケーション税制対象となる市販医薬品を年間1万2,000円以上購入したときに所得控除が受けられる。
住宅ローン減税省エネ基準などを満たしたマイホームの購入・リフォームをしたときに、住宅ローン残高の0.7%の金額を所得税から差し引ける。
配偶者控除配偶者の給与収入が103万円(合計所得が48万円)以下の場合に受けられる所得控除。配偶者の産休・育休中にも控除対象となる可能性があるためチェックが必要。
扶養控除16歳以上の扶養親族がいる場合に所得控除が受けられる。子どもが16歳以上になった、親の収入がなくなったなどの変化があれば適用が受けられないか確認。
確定拠出年金勤務先や個人で掛金を拠出して積み立て運用する年金制度。掛金が所得控除されるほか、運用益も非課税、受け取り時にも税控除が受けられる。
ふるさと納税自治体に寄附した金額(自己負担額2,000円を除く)が所得税および住民税から控除される+自治体から返戻品が受け取れるお得な仕組み。

サラリーマンであれば、毎年同じように年末調整を行う方が多いかもしれません。しかし、自分が適用を受けられると知らずに、控除を受け損ねている可能性もあります。特に、家族や環境の変化があった年には、適用される控除や減税措置がないか確認しましょう。

会社員ができる節税対策は以下の記事で詳しく解説しています。
内部リンク:会社員でも節税対策できる!資産も増やせる節税方法で手取りをアップ

副業で給与所得を圧縮する

会社員がさらに効果的に節税するには、「副業」がおすすめです。個人事業主として開業し、副業で継続的に収益を得られるようになれば、さまざまな節税メリットが受けられる「事業所得としての青色申告」が可能です。副業が赤字であったとしても、その分給与所得を圧縮できるため節税効果を得られます。

「実態のない個人事業主での節税も脱税とみなされるから」でも説明したように、事業所得を青色申告すると、以下の節税メリットが得られます。

・経費計上できる
・給与所得と損益通算できる
・最大65万円の青色申告特別控除が受けられる

副業のために使った費用、例えばパソコン代や書籍代、交通費、打ち合わせや情報交換のための飲食代などは経費計上できるため、副業の所得を削減できます。自宅で作業していれば、家賃や光熱費、通信費なども、プライベートと副業での使用割合に合わせて経費計上が可能です。前述のとおり、事業実態がないのにもかかわらず経費や赤字を計上するのは脱税行為とみなされます。

一方で、事業を行ったうえで適切な経費計上をし、その結果赤字であったのであれば、給与所得との損益通算によって所得税が軽減されます。さらに、申告方法の条件を満たせば青色申告特別控除が適用され、副業で得た所得のうち最大65万円までに税金がかかりません。

個人事業主には会社員にはない節税メリットがあります。副業は副収入を得られるだけでなく、節税対策としても高い効果を得られます。事業実態のない「ペーパー個人事業主」ではなく、実際に事業で収益を出し、個人事業主のメリットを賢く活用していきましょう。

プライベートカンパニーを設立する

副業での事業規模が拡大していった際には、プライベートカンパニーを設立して節税を図りましょう。プライベートカンパニーとは、個人の資産や副業収入を管理するための会社を指し、広い意味では一人社長の会社のように「個人が設立する会社」が当てはまります。

プライベートカンパニーによって節税できる理由は、一定の所得を超えると個人事業主の所得に課税される所得税率よりも、法人の所得に課税される法人税のほうが安くなるからです。プライベートカンパニーが税制上有利になるのは、課税対象となる所得金額が800万〜900万円以上が目安といわれています。また、個人事業主よりも経費計上できる項目の幅も広がります。

節税のためだけのペーパーカンパニーは節税対策としておすすめできませんが、事業実態があるプライベートカンパニーであれば合法的な節税効果が得られます。個人全体にかかる税負担を軽減するために、所得に合わせた適切なタイミングで活用しましょう。

まとめ|会社員の節税はペーパーカンパニーよりも副業が有効!

会社員が節税のためにペーパーカンパニーを設立するのは、税金を不当に減らす脱税行為とみなされるリスクが高いです。ペーパーカンパニーが節税できるといわれるのは、複数の会社に所得を分配したり、接待交際費をより多く計上したりすることで法人税を安くできるからです。

タックスヘイブンを使った租税回避も1つの手段です。ただし、節税目的だけにペーパーカンパニーを設立して利用することは脱税行為とみなされます。同様に、事業実態がないにもかかわらず、節税のためだけに個人事業主として開業して赤字申告を行うのも、不当な税金逃れとみなされます。事業を行っていない会社員の方がペーパーカンパニーを作るのは、設立や維持にコストがかかるため節税対策にはなりません。

まずは、税制上の控除や優遇措置の適用漏れがないかをチェックしましょう。さらに積極的な節税を目指すなら、副業で収益を上げるのが効果的です。副業の事業で個人事業主として開業し、事業所得として認められれば、さまざまな節税メリットを得られます。副業で事業に取り組むのは、会社員にとって副収入と節税が同時に叶う魅力的な方法です。リスクのない賢い手段で、手取りの収入をアップさせていきましょう。

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この記事を書いた人

お金に関する基本的な知識から貯金のコツ、資産形成まで幅広く伝えるメディア「@nextマガジン」の運営を行っています。ここにくれば、お金の悩みが解決できる「お金の広辞苑」を目指して日々記事を公開中です。本当にタメになる情報だけを厳選してお届けします。

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