節税をしながら、将来の老後資金の準備ができると注目を集めるiDeCo。
iDeCoは投資信託で運用することができ、長期的に資産を増やすことが可能です。
しかし、投資にはリスクがつきものとはいえ、元本割れは気になるところですよね。
そこで今回は、FP1級である元銀行員が元本割れの原因と対策を徹底解説します。
この記事を参考にして、ぜひiDeCoを上手く活用してください。
元本確保型と元本変動型が選べる
iDeCoでは、ご自身で選んだ金融商品で掛金を運用することができます。
選択できる商品は、「元本確保型」と「元本変動型」に分かれます。
※この辺に運用商品をまとめた画像があるとわかりやすい
イメージ:https://www.meijiyasuda.co.jp/401k/chishiki/product/index.html
元本確保型には、定期預金や保険があり、一定の利率で運用されます。
商品によって異なりますが、年利0.02~0.03%(※1)と金利は低いのが現状。
資産の変動がないため、安心感はありますが、資産を大きく増やすことはできません。
一方、元本変動型は投資信託を指します。
株や債券など、価格の変動があるもので運用するので、iDeCo内の資産も日々変わります。
金融機関によって取り扱う銘柄は異なりますが、「国内株式」「海外株式」「海外債券」「バランス型」など種類が豊富です。
投資スタイルに合わせて、資産配分も自由に設定することができますよ。
種類が多すぎて迷う人がいるのも事実です。
それぞれのメリット・デメリットを参考に自分に合った運用先を考えてみてくださいね。
■投資信託とは複数の企業の株や債券などで運用するおまとめパックのこと。運用はプロにお任せするため、投資初心者や忙しい人にぴったりな金融商品。銘柄によって、投資先は異なります。
→投資信託とは、運用の専門家が株式や債券など様々な投資対象に分散して投資する金融商品で、プロに運用を任せることができるため、初心者にとって購入しやすい商品です。
※1 SBI証券取り扱い商品 執筆時点の利率iDeCo(個人型確定拠出年金)の運用商品一覧(元本確保型)|SBI証券 (sbisec.co.jp)
①元本確保型のメリット
元本確保型の一番のメリットは、資産が大きくマイナスにならないことです。
※そのため安全性が高く、リスクを負いたくない人にはおすすめです。
定期預金や保険は一定の金利で運用されるため、利率は必ずプラスです。
受取金額が決まっているので、将来の資金計画が立てやすいですね。
②元本確保型のデメリット
現状、日本では低金利のため、資産を大きく増やすことができません。
年利0.02%の場合、100万円の資産があったとしても、1年で利息はたった200円です。
しかも、iDeCoには手数料がかかるので、いわゆる「手数料負け」してしまいます。
また、インフレ対策ができないのも欠点といえます。
例えば、金利が0.02%しかつかない中、物価が年間2%上がると、お金の価値は目減りしてしまうことになります。
コツコツ貯めたiDeCoの資産が、受給時には額面も価値も下がっていると悲しいですよね。
運用が長ければ長いほど、その可能性も高くなるので注意が必要です。
③元本変動型のメリット
元本変動型は、掛金を運用することで資産を増やすことができます。
例えば、年率5%で毎月2万円を30年間積み立てた場合、運用益は917万円(※1)。
元本が720万円に対して、総資産は1,637万円と大きく増えることが分かります。
運用する銘柄によって、投資成績は異なります。
毎月2万円を30年間運用した場合、年率の違いによる総資産額は以下の通りです。
年率3% | 年率5% | 年率7.5% | |
---|---|---|---|
元本 | 720万円 | 720万円 | 720万円 |
運用益 | 440万円 | 917万円 | 1,861万円 |
総資産 | 1,160万円 | 1,637万円 | 2,581万円 |
運用で出た利益は通常20.315%の税金が引かれますが、iDeCoは非課税で受け取れるのもうれしいポイントです。
お金にも働いてもらいながら、老後資金を効率よく貯めることができますね。
※1 シミュレーションツールにて計算
参考:iDeCo・NISAシミュレーション: 三井住友銀行 (smbc.co.jp)
投資にはリスクがあります。
一般的に価格の変動(リスク)が大きいほど、得られる利益(リターン)も大きくなるのが特徴です。
まずは、ご自身の目標額から逆算して、どれくらいのリターンが必要なのか確認してください。
その上で、許容できるリスクか判断するとよいでしょう。
④元本変動型のデメリット
投資信託で運用すると、掛けた金額よりマイナスになる可能性があります。
なぜなら、株式や債券は経済状況によって、上がったり下がったりを繰り返すからです。
特に受給開始直前で暴落が起こってしまうと、大きく元本割れしたまま受け取ることになるかもしれません。
また、受け取り時期にならないと、資産がいくらになっているか分からないため、老後の資金計画が立てにくいこともデメリットの一つです。
暴落を経験すると、大きく資産は減ってしまいます。
実際、リーマンショックやコロナショックでは、資産が3分の1ほどになった人もいました。
しかし、過去の動きから見ると、相場は必ず回復しています。
元本割れしている時は慌てて受け取らず、受給時期を遅らせることもできますよ。
元本割れはどんな時に起こる?
手数料負け
手数料負けとは、手数料が運用益を上回る状況のことです。
iDeCoにはさまざまな手数料がかかるため、それ以上の利益がないと元本割れしてしまいます。
定期預金などの元本確保型を選択した場合は、特に注意が必要です。
なぜなら、金利が低いため、ほとんどのケースで手数料負けが発生するからです。
例えば、年利0.02%の定期預金で100万円預けると、1年で得られる利息は200円。
一方、iDeCoの運用中の手数料は、年間2,052円~です。
手数料のほうが負担が大きく、運用期間が長いほど、損失も大きくなることが分かります。
手数料は金融機関によって異なります。
特に「運営管理手数料」にこだわりましょう。
毎月0~数百円と大きな差があり、運用期間が長ければ長いほどiDeCoの資産への影響も大きくなります。
できる限り、運営管理手数料が0円の金融機関を選ぶことをおすすめします。
運用状況が悪化
投資信託は日々価格が変動しているため、運用している資産も上がったり下がったりを繰り返します。
よって、経済状況が悪くなれば、元本割れしてしまう可能性があります。
例えば、リーマンショックのときには、アメリカの株式は1年4カ月かけて52.6%(※1)も下落しました。
そのときは元の水準に戻るのに5年5カ月かかっており、その間に現金化した人は損失が発生していたケースもあります。
投資信託での運用は増える可能性がある一方、元本割れを経験することもあります。
しかし、下がったからといって焦って解約することは禁物です。
iDeCoは60〜75歳の間で受給時期を決められるため、相場が回復するまで運用を続けることもできますよ。
※1 投資信託は最悪どこまで下がる? S&P500と全世界株式の30年検証 | AERA dot. (アエラドット) (asahi.com)
元本割れの確率は?
リーマンショックやコロナショックなどの暴落は定期的に起こっています。
長い期間運用する場合、高い確率で資産の下落を経験することになるでしょう。
元本割れリスクを軽減するには、長期運用を心がけましょう。
経済は好況と不況を繰り返して成長していくものです。
短期的に利益を求めるのではなく、長い目で資産を増やすことを目標にするといいですよ。
また、投資先が一つのものに集中してしまうと、暴落が起こったときに大きなダメージを受けてしまいます。
その点、投資信託は複数の株式や債券で運用されており、一つの銘柄でも分散投資されているのがうれしいポイントです。
さらに、積立投資することによって、投資のタイミングを分散することができます。
株価が下がっているときは「期間限定セール」と同じ。
安く投資信託を買うことができるので、全体的な平均購入価格を下げることができます。
また、株価が戻ってきたときには、資産がグンと増えるのが特徴です。
暴落を経験しても焦ってはいけません。
「長期・分散・積立」運用を継続することで、最終的に元本割れする確率はかなり減らせますよ。
iDeCoは、60歳~75歳の間で受け取り時期を自由に選べます。
仮に59歳のときに暴落で元本割れしてしまっても、受給時期を伸ばせばプラスになる可能性は十分ありますよ。
事前にできる2つの元本割れ対策
投資にはリスクがあります。
初めて運用する方は、特に不安を感じるものです。
iDeCoにはさまざまな運用方法があるため、事前に元本割れリスクを抑える方法を知っておくとよいでしょう。
スイッチング
これまで積み立てたお金の運用方法の変更を「スイッチング」といいます。
特に受け取り時期まであと数年ということであれば、株式中心の投資信託から債券や定期預金など、安定資産に配分変更することがおすすめです。
運用で増えた利益を確保することができますよ。
スイッチングには手数料はかかりません。
その時の経済状況や意向に合わせて、融通が効きやすいのはiDeCoのメリットです。
資産配分の変更
毎回の積立で購入する商品と、その割合を変更することも可能です。
値動きを調整することができますよ。
一般的に、株式は債券と比べて、ハイリスク・ハイリターンとされています。
株式のみの投資信託で値動きが大きいと感じるのであれば、債券や定期預金などを組み合わせましょう。
配分割合は1%単位で設定ができます。
また意向が変われば、変更手続きはいつでも可能ですよ。
ただし、締め日があるため、実際に変更させるまでには日数がかかります。
まとめ
iDeCoは節税のメリットがありながら、将来の老後資金を作ることができる制度です。
しかし、残念ながら元本割れが起こってしまう可能性もあります。
当初の目標金額に達せず、老後の生活に不安が残る結果となってしまうかもしれません。
元本確保型と元本変動型で商品数が多く迷いますが、それぞれのメリット・デメリットを考慮した上で、ご自身の考えで選んでOKです。
ただし、手数料は資産にとってマイナスにしかなりません。
手数料の金額は金融機関によって異なるので、事前に確認して口座開設しましょう。
投資にはリスクがつきものです。
しかし、「長期・分散・積立」投資をすることで、リスクは大幅に軽減できます。
また、投資信託で運用することで、長い目で大きく資産を増やすことも可能です。
時間を味方につけて、無理のない範囲でiDeCoを始めてみましょう。