FXで取引する際、取引手数料はかかりませんが、実質的なコストとしてスプレッドが発生します。
そのため、スプレッドの仕組みと注意点の理解が、長期的な利益を目指すうえで重要です。
今回の記事ではスプレッドの基本的な仕組みや変動要因、そしてスプレッドを考慮した取引について詳しく解説します。
この記事を読むとスプレッドについての知識を深めて無駄なコストを削減し、効率的なトレードができるようになるでしょう。
FXにかかる手数料
最初にFXのトレードにかかる取引手数料などのコストについて解説します。
取引手数料はかからないFX会社がほとんど
最近、多くのFX会社では取引のたびに手数料を請求することはありません。
取引手数料無料が主流となっているため、初心者でも安心して取引を始められます。
FXの取引手数料が無料の場合、以下のようなメリットがあります。
- 取引のたびに手数料を支払う必要がない
- 手数料分のコストを気にせず、取引に専念できる
- 少額取引でも手数料負担が発生しない
ただし、FX会社は完全に無料で取引を提供しているわけではありません。
手数料を無料にする代わりに、FX会社はスプレッドで利益を得ています。
スプレッドは実質的な手数料
FX取引において必ず発生するのが、「スプレッド」と呼ばれる売値と買値の差額です。
スプレッドはトレーダーが通貨を売買する際に間接的に支払う実質的な手数料であり、FX会社にとっての利益となります。
ロスカット手数料がかかるFX会社がある
ほとんどのFX会社では取引手数料はかかりませんが、一部のFX会社ではロスカットが発生した際に手数料を請求されるケースがあります。
ロスカットとはFX会社所定の水準以上の損失が発生した場合に、保有しているポジションを自動的に決済する仕組みです。
ロスカットはトレーダーの資産を保護するための仕組みですが、一部のFX会社ではロスカット発生時に手数料を請求します。
また、ロスカット手数料の金額は、FX会社によって異なります。
ロスカット手数料は、取引損失とは別に発生する費用です。ロスカットを回避するには証拠金にゆとりを持たせ、リスク管理を徹底することが大切です。
FXにおけるスプレッドとは?
ここからはFXの実質的な手数料であるスプレッドについて、詳しく見ていきます。
スプレッドの仕組み
スプレッドはFX取引における売値と買値の差額で、実質的な手数料です。FX会社は取引の際に、常に2つの価格を提示します。
- 買値(Ask):トレーダーから見た通貨を買う場合の価格
- 売値(Bid):トレーダーから見た通貨を売る場合の価格
以下は、米ドル/円のスプレッドの一例です。
買値(Ask) | 売値(Bid) | スプレッド |
---|---|---|
100.05円 | 100.00円 | 0.05円 |
上記の場合、1通貨あたりのスプレッドは0.05円となります。
新規エントリーが約定すると、スプレッド分が損失となって取引がスタートします。
エントリー:新規に注文を出すこと
約定(やくじょう):取引が成立すること
スプレッドが引かれるタイミング
FXではトレーダーが新規注文を出した際に、注文が約定した時点でスプレッド分が損失として発生します。
そのポジションを決済したときには証拠金に反映されます。
たとえば、スプレッドが0.01円の通貨ペアを1万通貨購入し、レートが変動する前に決済した場合の損益は、以下のようになります。
- 新規エントリーが約定した際の評価損益:-100円
- 約定レートと同じレートで決済
- 100円の損失が確定し、証拠金から差し引かれる
ポジションを保有している間は、スプレッドは発生しません。
マイナススワップと違い、ポジションを保有している間ずっと発生するのではなく、新規注文の約定時のみ差し引かれます。
また、指値注文や逆指値注文の場合も、注文が約定した時点での売値と買値の差額がスプレッドとして差し引かれます。
マイナススワップ:スワップポイントのうち支払いが生じるもの
スワップポイント:2国間の金利差の調整分。金利の高いほうの通貨を買うとスワップを受け取れ、金利の高い通貨を売るとスワップを支払う
FXで注文が約定すると、マイナスからのスタートとなります。
これは、スプレッド分が損失となるためです。
スプレッドと取引手数料との違い
FXにおけるスプレッドと取引手数料は、どちらもトレーダーにとってのコストですが、その性質は異なります。
両者の主な特徴は以下のとおりです。
項目 | スプレッド | 取引手数料 |
---|---|---|
定義 | 売値と買値の差額として間接的に支払うコスト | 取引のたびに直接的に支払う費用 |
取引のたびに発生 | 〇 | 〇(多くの会社で無料) |
変動性 | 変動するが、固定の場合もある | 一般的に固定されている |
トレーダーはスプレッドと手数料を合わせたトータルのコストを考慮して、FX会社を選ぶ必要があります。
スプレッドの計算方法
FXにおけるスプレッドは、売値(Bid)と買値(Ask)の差額として計算されます。
スプレッドの単位はドル円とクロス円の場合は銭、日本円以外の通貨ペアの場合はpips(ピップス)で表されます。
1銭 = 1pips = 0.01円
たとえば、米ドル/円の売値が99.95円、買値が100.00円の場合、スプレッドは以下のように計算されます。
スプレッド = 買値 – 売値
= 100.00円 – 99.95円
= 0.05円
= 5銭(5pips)
スプレッドによるコストは、スプレッドに取引する通貨数量を乗じて計算します。
取引コスト = スプレッド × 取引通貨数量
以下は、異なる通貨数量でのスプレッドによる取引コストの計算例です。
取引数量 | スプレッド | 取引コスト |
---|---|---|
1,000通貨 | 5銭(0.05円) | 1,000通貨 × 0.05円 = 50円 |
10,000通貨 | 5銭(0.05円) | 10,000通貨 × 0.05円 = 500円 |
100,000通貨 | 5銭(0.05円) | 100,000通貨 × 0.05円 = 5,000円 |
このように、スプレッドはFXにおける重要な取引コストです。
取引のたびに売値と買値の差額を支払う形となり、取引数量が多ければ多いほどコストも増加します。
クロス円:米ドル以外の通貨と円のペア
スプレッドは狭いほどよい
FX取引においてスプレッドが狭いほど取引ごとにかかるコストが少なくなり、トレーダーにとって有利です。
同じ価格変動でもスプレッドが狭ければ、より多くの利益を得られます。
スプレッドが狭いFX会社を選ぶと取引のコストを抑え、利益の最大化が可能です。
一般的に取引量の多いメジャー通貨ペアのスプレッドは狭く、取引量の少ないマイナーな通貨ペアのスプレッドは開きやすくなります。
通貨ペアごとのスプレッドの目安は?
では、実際にFX会社ごとのスプレッドにはどの程度の差があるのでしょうか。
ここでは、主要な通貨ペアのスプレッドの水準を以下の表にまとめました。
通貨ペア | スプレッドの目安 |
---|---|
米ドル/円 | 0.2 銭~ 2.0銭 |
ユーロ/米ドル | 0.1 pips ~ 2.0 pips |
英ポンド/円 | 0.4 銭~ 5.0銭 |
ユーロ/円 | 0.3 銭~ 3.0銭 |
豪ドル/円 | 0.3 銭~ 4.0銭 |
NZドル/円 | 0.7銭~ 7.0銭 |
メキシコペソ/円 | 0.1銭~ 1.0銭 |
南アフリカランド/円 | 0.1銭~15.0銭 |
トルコリラ/円 | 0.9銭~9.0銭 |
米ドル/円のような流通量の多い通貨ペアのスプレッドは狭く、トルコリラ/円のような比較的マイナーな通貨ペアのスプレッドは開いているとわかります。
また、南アフリカランド/円のようにFX会社によってスプレッドの水準に大きな差のある通貨ペアもあります。
口座開設する場合、主に取引する通貨ペアのスプレッドがなるべく狭いFX会社を選びましょう。
スプレッドの変動についての注意点
通貨ペアごとのスプレッドはFX会社によって異なりますが、同じFX会社でも常に一定ではありません。
ここでは、スプレッドの変動について解説します。
スプレッドが広がりやすい時間帯がある
FXのスプレッドは、市場の流動性に大きく影響されます。
流動性とは取引量の多さで、「流動性が高い」とは取引が成立しやすいという意味です。
流動性が低下する時間帯では、スプレッドが拡大しやすくなります。
以下は、スプレッドが広がりやすい主な時間帯です。
- 米国市場クローズ後から東京市場オープン前(日本時間の早朝)
- クリスマス時期や年末年始などの欧米市場の休場期間
これらの時間帯は市場参加者が少なくなるために流動性が低下し、スプレッドが広がる傾向にあります。
FXトレーダーはこのような時間帯を把握し、取引時間を調整することでコストを抑えられます。
大きなイベントの前後はスプレッドが広がりやすい
FXにおけるスプレッドは、為替レートの変動幅が大きくなると広がりやすい傾向があります。
特に重要な経済指標の発表や中央銀行の金融政策決定会合などの前後は為替レートが大きく動きやすく、スプレッドが拡大しやすくなります。
以下は、スプレッドが広がりやすい主なイベントの例です。
- 米国の雇用統計発表
- FOMC(連邦公開市場委員会)の金利決定会合
これらのイベントは市場参加者の関心が高く、発表内容によって為替レートが大きく変動する可能性があります。
そのため、イベント前は市場参加者が様子見となり、取引量が減少する一方で、イベント後は一斉に取引が行われ、レートが大きく変動する場合があります。
こうした市場の混乱により、スプレッドが一時的に拡大するケースが多くなるのです。
スプレッドには「固定制」と「変動制」がある
FXにおけるスプレッドの設定方式には「変動制」と「固定制」の2種類があります。
変動制スプレッドは、市場環境の変化に応じてスプレッドが変動する方式です。
一方、固定制スプレッドは一定の値が設定される方式です。
通常、インターバンク(業者間)の為替市場ではスプレッドは変動するため、その変動を反映するのが変動制スプレッドです。
しかし、スプレッドが常に変動していると、トレーダーにとってはリスクが高くなります。
そこで、多くのFX会社では「原則固定」という、固定制スプレッドをベースとしつつ市場の状況によってはスプレッドが広がるケースもある仕組みを採用しています。
初心者はスプレッドが原則固定になっているFX会社を選ぶようにしましょう。
FXで手数料負けを防ぐ方法
手数料負けとはFXの実質的な手数料であるスプレッドによる損失が、利益を上回る状況をいいます。
スプレッドを意識せずに取引をすると、手数料負けの状態になりかねません。
ここでは、FXで手数料負けを防ぐ方法について解説します。
必要以上にエントリーしない
FXにおいて手数料負けを防ぐには、必要以上にエントリーをしないようにしましょう。
頻繁にエントリーをすると、スプレッドによるコストが積み重なり、手数料負けのリスクが高まります。
必要以上のエントリーを避けるには、以下のポイントを意識しましょう。
- 確信度の高いエントリーポイントでのみ取引をする
- トレードルールを設定し、厳守する
確信度の高いエントリーポイントでのみ取引するには各トレードにおいて十分な分析をし、勝率の高い局面を見極める必要があります。
また、自身の取引スタイルに合ったトレードルールを作成し、感情に流されることなくルールに沿った取引を徹底しましょう。
取引判断にはスプレッドを加味する
手数料負けを避けるためには、取引判断の際にスプレッドを加味する必要があります。
1トレードの利益目標を設定する際は、スプレッドを上回る値に設定します。
たとえばスプレッドが2pipsの場合、最低でも2pips以上の利益を目指すようにしましょう。
また、最初からスプレッドの狭いFX会社に口座開設をすると、小さめの値動きでスプレッド分の損失が吸収でき、利益を得やすくなります。
まとめ
FXにおけるスプレッドは、実質的な手数料です。
スプレッドの仕組みや変動要因を理解し、適切に取引判断に反映させることが長期的な利益につながります。
スプレッドによるコストを抑えるには、スプレッドの狭いFX会社を選ぶ必要があります。
自分が取引したい通貨ペアのスプレッドが狭く、取引単位が小さいFX会社に口座開設するようにしましょう。